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羅門しか知らない霊の恐怖
連載第七話

このお話は、実際に私が体験した話ではありません。ただ、ある方から聞いたお話でございます。
その人の名前は大西さんという仮の名前でお呼びします。

その大西さんが、ある田舎の無人のような駅に着きました。午後1時か2時のことだとお聞きしました。その駅で、谷口というところへ行くバスを待つようにと言われていたのです。
15分か20分ほど待つと、バスが来ました。運転手に「このバスは谷口というところで停まりますか」と聞いたら「ああ谷口に行かれるのですか、停まりますよ」と教えてもらいました。
こうして大西さんはバスに乗り、その谷口というバス停を降りました。バス停には不動産屋が待っていました。この日、大西さんは、ある家を買うかどうかを決めるために、都会からこの人里離れた田舎までやって来たのです。
不動産屋と挨拶を交わした後、不動産屋に連れられて、バス停から竹藪の中の道を通って、少し山の方へ歩いていったそうです。

不動産屋「やはりこういう田舎の古い家がご趣味ですか」
大西さん「やはり都会よりも、こういう静かなところに住みたいと思っているところに、ちょっとこの谷口にある物件を見たものですから、それであなたに連絡したのですよ」
不動産屋「ああそうですか。まあぜひ見てください」

竹藪の中を歩いて、しばらく山のほうへ進んでいきますと、ちょっと平らなところがあって、トウモロコシとか、カボチャなど、そういうような畑がわりあい広く見えてきました。

不動産屋「大西さんはこういうような、農園で畑いじりみたいなことはお好きですか?」
大西さん「いや別に嫌いではないですけど、なにせ都会に住んでいるものですから、農園もないもので、あまり経験はないんですよ。でも、この辺は畑いじりができて良いところですね」
不動産屋「そうなんです。この辺は何が良いかと言えば、四季が感じられるし、畑いじりもできますし、大西さんが気に入るかどうか……あっ、そろそろ見えてきますよ。あの家が売りに出ている家なのですよ」

こうして不動産屋と2人で、その先にある家のほうへと歩いていきました。
その家は確かに、築百年ぐらいは経っているように見える、旧家でした。大西さんは、渋くて良い家だと思い、感無量でその家を眺めていました。
間もなく、お爺さんが家のほうから出てきて、大西さんに挨拶をしました。

お爺さん「いやぁ、良くいらっしゃいました。ここまで遠かったでしょう。この辺は駅も遠いし、不便なところですけど、自然は良いですよ。この家の前にある畑も全部一緒ですから、畑遊びをなさるのも良いかもしれませんね」
大西さん「お爺さんがここの持ち主ですか?」
お爺さん「そうだそうだ、私がここの家の持ち主ですよ」
大西さん「そうですか、あの…ここをもし売ってしまったら、お爺さんはどうするんですか」
お爺さん「いやいや、この下のほうにある小さな街に、息子夫婦が住んでいます。息子にも『年寄りは山にいるよりも、街に降りてきたほうが何かと便利だ』なんて言われているものですから、私はここを整理して、街のほうへ降りて行こうかなと思ってるんですよ」
大西さん「そうですか。お爺さんは、ここで一人で暮らして寂しくないですか?」
お爺さん「いやいや孫もいるんですよ。孫は今ちょうど休みなものですから、私のところへ来ているのですよ」
大西さん「ああそうですか、それじゃあ寂しくないですね」
お爺さん「向こうから歩いてくる子が孫なんです。ほら、こっちへいらっしゃい。あの孫がいるから私はあんまり寂しくないんですよ」

お爺さんの孫は、大西さんの前にスタスタと歩いてきて、ぺこっとお辞儀をして、それでまた畑のほうへ行ってしまいました。

大西さんは、お爺さんと不動産屋と三人で、家の中を見せてもらうことにしました。中から見ても、やはり古い家です。梁や柱が黒くて、煤けたような色になっています。柱が太く、梁も太く、やっぱり昔の建物という感じがします。お爺さんは
「こういう住まいが好きならば、こういう色も値打ちになると思うし、この黒さも良い色合いに見えるよね」
と言って、一人で頷いていました。

畑のほうも見せてもらいました。お爺さんは大西さんに
「ここでは今こんなものを作っているけれども、土壌がなかなか良いからいろいろなものを作れるよ、あなたも畑いじりしたら楽しいですよ」
と、話しかけました。孫もキュウリか何かを取っているように見えました。

大西さん「そうですか、いろいろなものが取れるんですか、ああそういえば不動産屋さん、ここの家をちょっと写真に撮っていいですか?」
不動産屋「ああ、お爺さん良いだろ?」
お爺さん「ああいいよいいよ、どこでも撮ってくれ」
大西さん「お爺さん、それなら記念に写真を家の中で撮りたいのですが、一緒に撮らせてください」
お爺さん「あー、わしなんか撮ってもしょうがないじゃないか、じゃあ孫を呼んであげるから待ってて」

こうして不動産屋とお爺さんとその孫と、その家の縁側のようなところで写真を撮りました。縁側もまた、やはり造りがしっかりしていて、黒くいぶしたような古い感じがよく出ていました。そしていろいろな角度から、家の写真はもちろん、家と一緒にお爺さんを撮ったり、畑をいじる孫、そして不動産屋の写真まで記念のつもりで撮りました。大西さんは写真ができあがったら、この日本的な、のんびりとした田舎にたたずむ、都会の喧噪を忘れるような渋い家の写真を、まず自分の妻に見せてから、お爺さんや孫にも写真を送ってあげようと思っていたのです。

大西さんは、自分がここで奥さんと田舎暮らしをする様子を想像してみたりして、その家をかなり気に入っていたのですが、そろそろ帰りのバスの時間が近づいてきました。
「いやぁ、今日はいいものを見せてもらいました。私が帰りましたら、この写真を家内にも見せてやりたいと思っています。またお訪ねすると思います。どうぞその時はひとつよろしくお願いします」
と、お爺さんに挨拶をして、帰路につくことにしました。不動産屋がバス停まで送ると言って、ついてきてくれました。

こうして不動産屋と一緒に、また竹藪を抜けて、谷口のバス停でバスを待つ間、お爺さんの息子夫婦が住んでいるという街の話とか、役場だとか、病院だとか、バスや電車の本数、そんなことを不動産屋と色々と話しました。不動産屋が言うには
「この谷口のうんと上の方にも、1軒売りに出ている家があるけれども、そこへ行くのはちょっと遠いし、坂がきついから、若い人なら良いのだけれども、大西さんだったら今見てきた家の方が良いですよ」
ということも言われました。

そしてバス停にバスが来たので、不動産屋にお礼を言ってバスに乗りました。バスの運転手は、行きと同じ運転手でした。大西さんは、もう何十年にもなるベテランという、そのバスの運転手から、妙な話を聞くことになりました。

大西さん「こんなに人が少なかったら、バスも大変ですね」
運転手「この辺には都会の人は滅多に来ないんだけれど、どこへ行って来られたんですか?」
大西さん「いや今日は、不動産屋の人に案内してもらって、谷口の藪の奥のほうの家を見てきたんですよ。家を買おうかと思ってね」
運転手「ああ、あそこの竹藪の奥の家かね。知ってますよ、ありゃー古い家だね。買って住むのかね?」
大西さん「ええ、そのつもりでいますけど」
運転手「そうだねぇ、あそこはねぇ、もう何十年も人が住んでないから、相当傷んでるかもしれないね」


大西さんは最初、運転手は違う家のことを言っているのかと思っていました。大西さんは確かにお爺さんや、その孫と会ってきましたし、写真まで撮ってきました。そういえば不動産屋が、もう1軒売り出している家があるとか言っていたので、運転手はそこと勘違いしているのかと思って、色々と説明してみましたが、どうも同じ家のことを言っているようです。運転手は怒ったような、妙に変な形相をして

「いやあお客さん、あそこは誰も住んどらんと言ったら、誰も住んどらんのですよ。あそこは、五十年ぐらいもう誰も住んどらんのですよ」

そう言って、運転手は大西さんを駅で降ろしたのです。大西さんは変な気持ちになりながら、無人駅から電車に乗り、家路についたのです。

数日後、撮った写真を現像してもらって、受け取りに行きました。大西さんは奥さんに写真を見せようと思って、写真を確認しました。すると、その家はきちんと写っていたのですが、お爺さんも、孫も、不動産屋さんも、誰も写真に写っていないのです。後でお爺さんや孫に写真を送ってあげようと思いながら、いろいろな角度から写真を撮ったはずなのに、お爺さんや孫どころか、不動産屋すら写っていないのです。大西さんは、何か背筋が寒くなるような思いをしました。
ただ、その家の廊下のところに、何かが写っていました。それは大西さんが気にもしていなかった猫です。中ぐらいの大きさの猫が、写真を撮るときにウロウロしていましたが、その時は気にもしていなかったのです。その猫だけが、いろいろな角度で撮った写真の中に写っていました。その猫以外に、人間らしきものは何も写っていなかったのです。

結局大西さんは、やっぱり妙な気がするので、もうその家へ行くのは、やめることにしました。そう思って不動産屋に電話をかけたのですが、返ってきた返事は「おかけになった電話は、現在使われておりません」という声だったのです。

本当に嫌な、怖い話です。大西さんは、写真に写らない人たちと話をして、写真を撮って、都会へ戻ってきたのです。写真に写っていた猫は普通の生き物で、お爺さんと、孫、そして不動産屋までが霊的な霊体であったのでしょう。この意味は、霊体が五十年かかったとしても、自分を救ってもらいたくて、現世の人間に会おうとしたのです。霊体は自分が救われるためなら、どんな現象でも起こしてくるのです。

他にも、このような話がありますので、少しずつ書いていこうと思います。このような怖い話というのは、何も小説ではありません。人生には一度ぐらいは、不思議な話を、誰も彼もがみんな経験しているものです。そんな話がいっぱいありますので、そのような話でよろしければ、またお話をしましょう。